という事で久々に結構オススメしたいアニメ映画がこれ。
「マイマイ新子と千年の魔法」。
この映画、一言でいうと、「となりのトトロ」並の面白さ。
すなわち、初期の宮崎ジブリアニメ好きには是非是非オススメ
したい映画、なんだけど、この映画結構数奇な?運命をたどって
いて。
何せ、今に至るまでまだDVD化のメドが立っていないらしい。
だからこのまま、幻のフィルムになってしまう可能性もまだあり。
(状況は変わっているっぽいけれど)。
詳しい話はwikipediaのページhttp://ow.ly/1pdojを見てもらえれ
ばわかるのだが、要は1番館で全国ロードショーをしたんだけど、
お客が全然入らず、このまま打ち切りになるかも…という時に、
この作品を観た人たちが熱心に勝手連的にブログなどのクチコミで
単館上映館にあたり、細々と全国各地で上映され続け、今に至る。
←この一連の流れについては、4/18にNHKBS2のオタク・サブカル系
番組「MAGネット」で深夜にドキュメンタリーとして流れるらしいっす。
ちょっと前で言えば、「ホテルルワンダ」とか、ゴールデングローブ
賞をアメリカで獲ったけれど、日本公開未定だった「ハングオーバー」
みたいな感じというと、わかるかも。
つまり、これだけ人に愛された映画作品というのも珍しいなあ、
と一連の流れを見ながら思っていて、見たいと思っていたんだけど
ようやく見られたのが、今週の月曜。
見てみて、今まで見なかったことにマジで後悔しましたわ。
この映画の魅力は、先ほども書いたように、「となりのトトロ」とか
「おもひでぽろぽろ」を彷彿とさせる作品。
だけど、一つ違うのは、この作品には、特に最近のジブリ作品に
あるようなアクがない。アクというのは、思想性みたいなもの。
また、この作品には、トトロやまっくろくろすけみたいなお化け
は出てこない。
そして、もしかするとジブリ作品に欠けている物が、この映画の中
では、すごく魅力的に描かれていると思う。
舞台は、昭和30年の山口県防府市。というより、周りには麦畑しか
ない「なんもない」田舎町。
そこに、東京から転校生がやってきて、という話。
youtubeで、冒頭の5分間が公開されているので、それを見てもらう
のが一番話が早いかも。http://ow.ly/1ryZp
なんもないと思われていたその世界は、実は子供の想像力、特に
主人公の新子の力を借りると、無限に時を超えるセンス・オブ・
ワンダーの世界へと生まれ変わる。
この映画、様々なリンクを見ていくと、例えば「オジサンが泣いて
いる」http://ow.ly/1ryRt(日経BP)みたいな記事があったりもする。
だからといって、いわゆる「泣かせる」映画ではない。
個人的には、泣けるというより、切ない気持ちになった映画である。
この映画の中で描かれる遊び、自分たちの子供の頃は、まだかろう
じて当たり前のように体験できた事の気がするんだけど、多分、
今の子供達にしたら、あり得ない、とか思うんじゃないかな、と
思うからだ。
泥だらけになって川をせき止めてダムにするとかね。多分後で親に
は怒られたかもしれないけれど。
そういう世界の方が、もしかすると今の子にしたら荒唐無稽な、
ファンタジーの世界なのかも、と思ってみたり。
この映画を自分が気に入った理由って、多分、本当に子供の視点で
世界を描いてくれる事なんだと思う。
だから、大人である自分も、自分の子供時代に戻って、映画の中の
新子たちと一緒に遊んでいる気になれる。
世界は狭くても、どこまでも拡がっている気がしたし、夜は暗かった
し、大人達は怖かったけど、でも大人だったし。
それは多分、今の子供達にも通じるとは思うんだけど、そうじゃな
かったら、本当にただのつまらない作品になるかもしれない。
でもね、そうやって映画の中に引き込まれている間、個人的には
とても幸せだな、と思ったのは、映画の中の子供達が本当に「遊ん
で」いる事がうれしかったのだ。
映画の冒頭で転校してくる貴伊子ちゃんや、物語の中で出てくる
「姫」は、現代の私たちの分身、アバターなのだと思う。
彼女たちは何でも持っているけれど、何かが足りない。
足りないものは、「子供らしさ」、そして「笑顔」。
なぜなら、彼女たちにはまだ笑って遊べる友達がいないから。
いきなりの田舎へと来て、貴伊子は戸惑う。文化的なギャップに
驚く。だけど、そこにいて、新子や他の友達と過ごす内に彼女は
笑顔を取り戻していく。
そして、それが実はジブリアニメに欠けているものの気がする。
ジブリアニメって、意外に友達って要素無いよね。
ほのかな恋愛とかの関係はあるけれど、親友が、って話がない気が
したり。
映画の中で、新子がタツヨシという登場人物にいう台詞が耳に残る。
子供達を子供達たらしめる物、それは「笑顔」であり、「(明日も遊べる)
と思える時間(未来)」なんだと思う。それが無くなってしまうと、
子供は子供ではなくなってしまう。
私がこの作品を切ないと思った理由は、ミヒャエルエンデの「モモ」
を思い出したからかもしれない。「時間どろぼう」に時間や、空想す
る事を盗まれた子供達が、今の子供達なのかもしれないと思った
からかもしれない。
そして大人も。
大人がこの作品を見て泣く理由の正解はわからないけれど、でも、
少なくとも私たちは、もっと「遊ぶ」という気持ちを思いだしても
いいんじゃないかな。この閉塞感あふれる時代の空気って、もっと
遊ぶって事を思い出せば、変わっていくような気もするのだ。
もう一つだけ、付け加えるとするならば、この映画の中には、3つの
時間が流れていると思う。
一つは、先ほど書いた、無限とも思える子供の時間。
二つ目は、千年前も千年後も人は変わらない、という時間。
そして三つ目は、時は流れゆく、という視点。
この三つの時間がきちんと描かれていることがすばらしいと思う。
で、今現在だと、この作品、渋谷シネマアンジェリカ他で見ること
が出来ます。→上映館情報http://ow.ly/1pdGG
新座では主婦グループが実際にシネコンに掛け合って、上映を決定
させたらしい。スゴイ。
という風に状況は変わっているし、仮にこの作品が、もう少し多く
の人の目に触れたら、多分となりのトトロと同列の評価は与えられ
ると思うだけに、個人的にももったいないと思います。
自分がどうのこうのというよりは、この作品が本当に多くの人に
触れて欲しいなあ、というのが正直な感想。特に普段アニメ見ない
人たちに。
その上で個人的な反省も含めていうならば、こういう作品が、
宣伝費の関係だったり、配給がnot東宝系ってだけで埋もれていく
のって、そのことの方が問題なんだろうな、と思います。
今、テレビで目にする映画の宣伝って、ほとんどが東宝系か、
キー局が自社で作った映画だけだもんね。本当に。
逆に言うと、こういう良作がブログやtwitterでのクチコミで
拡がっていく世界っていうのは、それは豊かな世界なんじゃない
かなあ、とも思ったりもします。
とりあえず、個人的には見られて本当に良かったっす。