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「未来の食卓」

友人にチケットをもらったので、六本木ヒルズ他、TOHOシネマズで
開催されているらしいフランス映画祭の中の「未来の食卓」と
いうドキュメンタリー映画を見に行ってきた。

題材となるのは、フランスの山あいにあるバルジャックという
小さな村。
そこの村長の英断によって学校の給食をオーガニック食材に変えた
顛末を記録した作品。
ドキュメンタリー作家、森達也の言葉を借りるまでもなく、ドキュ
メンタリー作品というのは、その監督の主張を表現するために、
何をどう撮影するかに始まり、どう編集するかによって同じ場面で
あっても内容というのは変わってくると思う。

その意味で、やや扇情的な取り上げ方をしている場面もあったと
思うけれど、基本的に楽しむことができた。

それは題材の舞台が、フランスの小さな村の、子どもたちに脚光を
与えているからだと思う。
だから、監督の主張が、あまり押し付けがましく聞こえてはこなく
て、自然と色々と考えさせる構成になっていると思うのだ。

で、これは上映終了後の、この作品の監督との対談で中目黒にある
野菜スイーツ専門店「ポタジエ」 のパティシエ?シェフ?
の、柿沢さんが言っていた事に共感するんだけど、この作品の取り上げている
運動の素晴らしいなと思うところは、オーガニック食材の美味しさ
を、まず子どもに体験させていることなんだと思う。子どもが学校
給食で、有機食材の味を覚えることで、親たちもその子ども達の
声に押されて、自然と有機食材を使うように変化していく。

今までいかに有機食材が身体にいいかを知っていても、値段の問題
などでためらっていたり、使い方を知らなかったのが、自分たちも
体験するようになってみて、その美味しさや、そっちの方がいいん
だ、と知っていくのだ。

これは、例えば有機野菜を普及させる為に、補助金をばら撒くこと
よりも、学校給食で有機食材を使うための予算を増やす形で使う事
の方がよりスマートな方法に思える。
また、学校給食で有機食材を使う事で、それが地元の有機農家に
とっては販売ルートの確保になるわけで、地元の農家の繁栄にも
つながって一挙両得な訳で。

また、学校給食を作っている調理師の人たちにとっても、今までは
予算の関係で、どこのものか分からないもの加工品を使うしか
なかったのが、自分たちの目に見えるものを使う事ができる訳で、
その分の手間ひまの増加はおそらく結構あると思うんだけど、その
事によって自分の仕事に対する誇りが生じるっていうのも、おそらく
フランス人的には特に、ポイントが高いのかも。

だって、この映画の中で有機食材の給食を食べている子ども達の
風景と、同じくドキュメンタリー映画、「スーパーサイズミー」
の中で出てきた、アメリカの公立校の給食を食べる子ども達の
どちらに自分に子どもがいたら入れさせたいか、って考えれば、
答えは自ずと出ると思うのだ。

ここで余計に解説をしておくと少なくとも「スーパーサイズミー」
当時、アメリカの多くの公立校は、予算不足のせいで自前で給食を
用意することができないので、企業の協賛を受けて給食を提供して
いるんだけど、それがいわゆるコカコーラや加工食品メーカーの
協賛なので、生徒たちは学校で、コカコーラや、加工食品食べ放題
の生活を送ることができるらしい。逆に言えば、それが彼の国の
肥満や健康問題の大きな問題だとも思うのだけど。

だから、この映画の性格って、アル・ゴアの「不都合な真実」に
近いんじゃないかな。声高に主張しても変わりにくいものを、映像
を通してみせることによって、見ている観客に感じさせ、考えさせ
る効果があると思うのだ。


ということで、いやあ、素晴らしい、よかったよかった、で終わら
せてもいいんだけども、この作品をもう少しだけ語ってみる。

この映画で明らかに語ってはいないけれど背景にあるのは、アンチ
グローバリズムなんだと思う。
それは、イタリアのやはり田舎で始まったらしい「スローフード」
運動と同様に。

つまり、どうして農業が大規模化、または省力化、効率化する為に
大量の農薬などを使わなきゃいけないかというと、WTOなどの
グローバリゼーションの中での価格競争にさらされているからだ、
という考え方もできる。
で、その農業におけるグローバリゼーションをがんがんと進めて
いるアメリカは何でそんなことをするかというと、これまた大規模
化・省力化・効率化で小麦やコーンを始めとして供給過多だから。

お前らうちん所の作物買え。こっちが安いのにわざわざ高い関税
かけて買わせないようにするのは不公平だ、とか言ってるわけで。
(そういう圧力団体がいるから日本にも色々と言ってくる訳ですね)

その結果農業でも、より多くの作物をより少ない手間で作れた方が
儲けが多くなるという競争を全世界規模で行なった結果が、この作
品のもう一つのテーマである、農薬を使う事における副作用の問題
なんだと思うのだ。

またそういう環境に対して高負荷をかけ続けているアメリカの農業
にも色々とほころびが出ているらしいけれど。

で、そういうのを半世紀くらいやってきて、今農家に何が起きて
いるのか、というのをわかりやすく見せてくれていると思う一方で
これはフランスだからなあ、と思う部分もちょっとだけあったり。

つまり、フランスっていうのは元々農業国で食物自給率は100%を
軽く超えられえるだけの余裕があるから、こういう食育を基にした
有機食材ムーブメントみたいなものが盛り上がっていく可能性は
高いと思うし、そうなったらいいよね、と思うんだけど、そこで万歳
をした自分たちを振り返って日本の農業の現状を考えると、ちょっ
と寒い気持ちもあったりして。

ただ、逆転して考えれば、このままだと日本の農業は高齢化の問題
だったり、それこそ国際化の中での価格競争などで存亡の危機だと
思うんだけど、そういう時こそチャンスとは言わないまでも、何か
が変わるきっかけになるとは思う訳で。

もう一つは、このフランスの田舎の町にはコンビニなどが無いわけで。
例えば日本の場合、全国津々浦々、どこに行ってもコンビニがある状況
で、子供達がコンビニフードよりも有機食材を選び続けるだろうか、と
いう不安というか疑問というかもあったりして。

フランスの場合、元々コンビニとかあまりないだろうから、そういう
不便さに慣れた人の方が、こういうのは受け入れやすいんじゃないの
かな。


私個人の話をすると、仕事の関係で知り合いになる外国人の人たち
というのが、大抵健康や食品に対する意識が高かったりするせいも
あって、知らず知らずのうちにオーガニックレストランや有機食材
を食べる機会があったりする。
で、そういうことが影響するのか、それとも年齢的なものなのか、
味の嗜好もここ数年で随分変わってきたなあ、と思ったりもして。

だから、個人的にはできれば多くの人が、小難しい事を考えなくて
も、より簡単に有機食材を楽しめるようになればいいなあ、とは
思うのだ。だってそういうお店が増えて入手しやすくなったり、
また知り合いの外国人を連れて行くときにも、お店の選択肢が増え
るといいなあ、と思うので。


あ、あとこの作品の中で、いわゆる一般的な商業的農業をやってい
るぶどう畑と、有機農業の畑の土壌の違いを見せてくれたんだけど
それを見て「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんのリンゴ畑を思い出した。
奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録
奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録
石川 拓治,NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班
JUGEMテーマ:健康


この監督、次回作も同じテーマで、日本でも取材すると言っていた
ので、木村さんとか取り上げてほしいなあ、とか思ったり。

あ、あとこの映画は今年の夏にUPLINKが一般公開するみたいなので、
興味を持った方は是非。



| 映画・演劇 | 14:48 | comments(2) | trackbacks(0) |
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管理者の承認待ちコメントです。
| - | 2009/06/25 2:14 PM |

私もこの映画観ました。
眠くなってしまいそうなほど
スローな話の展開でしたが
総合的によかったのかなと思います。

あらためてこちらのブログの分析を拝見して
勉強になりました。

オーガニック、大賛成です!
| かこ | 2009/07/31 8:37 AM |










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