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映画「東京タワー」
今回は映画ネタ。見てきたのは「東京タワー〜オカンとボクと、時々
オトン〜」

この映画を一言でいうと、「原作をもう一度、きちんと読み直したく
なる作品で、しかも泣けた」である。

私がリリーフランキーの原作小説を読んだのは1年以上前のことである。
その時の印象でいうと、私は泣けなかった、のだ。
今から思うと、泣けなかったと思う理由はいくつかある。
一つは、私が医療関係で働いていたこともあり、人の死、特に病院で
人が亡くなるということについて、慣れてしまった、という訳ではない
けれど、小説の主人公、ボクの立場というよりは、病院関係者の立場に
立ってしまう気がしたこと。

そしてもう一つは、私の母が同じくガンで命を落とした時、うちの場合
は献身的な看病を行なっていたのが、うちの父であり、私自身は強いて
いうなら、「時々オトン」の立場だった、という事もあるのかもしれない。
だから、原作を読んだときの母の死にきちんと向き合った、マー君に
対して、後ろめたさというか、自分が当事者になれなかった、という
思いがあって、泣けなかったんじゃないのかな、と思うのだ。

そんな私が、今回この映画版を見に行こう、と思った理由の一つは、
脚本を、劇団大人計画の松尾スズキが担当していて、それが原作者の
リリーフランキーの意向によるものだ、と知ったからである。

あの原作を松尾スズキがどのように脚色するのか、という事に興味が
あったし、また、リリーフランキーと松尾スズキは、故郷が同じ北九州
出身である、という事も知っていたので、TVドラマ版とはひと味違った
質感があるんじゃないかな、と思ったのだ。

それに今回の作品の監督、松岡錠司が初メガホンをとった映画「バタア
シ金魚」は今でも大好きな作品なので、自ずと期待も高まってきて。
しかも今回、松岡監督はわざわざリリーフランキーの吉祥寺でのサイン
会場にわざわざ足を運んで監督に立候補したらしいし。

そしてその私の期待は裏切られることなく、とてもいい映画作品になっ
ていると思うんだよね。

この映画作品と、それまでにTVで放送されたドラマ作品(連続の方は
ちら見しかしてないんだけど)の、私が感じた一番大きな違いは、
TVドラマの方が、ボクの物語という印象が強かったのに対して、今回の
映画では、オカンの物語になっていて、そのオカンを中心として、
オカンとボクの関係、そして時々オトンの関係がきちんと丁寧に描かれ
ている様に感じた事なのだ。

松尾スズキが最初書いてきた第1稿は、そのまま映画化すると4時間分に
もなったらしいけど、実際の映画作品でも、それだけ丹念に原作のエピ
ソードを掘り起こしていると思ったし。

特に、筑豊・小倉(北九州)編の、子供時代のエピソードの取り上げ方や
オトンの描き方が上手いなあ、と思うのだ。
船の模型の話とか、オトンの部屋の風景とか、小林薫演じるオトンは、
なんか本当にこういう親がいたからあのリリーが出来たんじゃないのか
な、と思わせるほどリアルに感じられて。

あれ、これって原作にあったエピソードだっけ、と思うほど細かいネタ
から、彼ら親子の関係を浮き彫りにしているので、本当にもう一度、
原作本をきちんと読んでみたくなるような感じで。

また、映像化された、筑豊(炭坑町)の情景(これは宮城県に残っていた
炭鉱町をロケ地に選んだらしい)や、東京の街の雰囲気というか、感じ
がいいなあ、と思うし。

特に東京の街並みは、普段見慣れた街並みなんだけど、なぜかとても
綺麗に見えたんだよね。東京タワーに限らず。

他の物語の場面にしても、後から思い返して印象に残るシーンの多い
映画だったというか。そしてそれが必ずしも物語のクライマックス、
泣けるシーンではなく、なんでもないシーンでも、結構印象に残って
いて。

ひとつ、具体例を挙げると、小倉のオトンの家を出て、筑豊の小料理屋
で働いていたオカンが、お客さんと健康ランドに行く時に、子供のボク
がついていくエピソードがあったと思うんだけど、そのシーンで、ボク
がオカンを探して歩き回るシーンがある。

それは、物語の中ではそんなに重要なシーンではないかもしれないけれ
ど、ボクとオカンの関係の物語の中では、結構重要なエピソードだと
思うんだけど、そのシーンの描き方が、上手いなあ、と思うし。

いい映画って、後から思い返したい名場面が多い映画だとするならば、
この映画は本当にいい映画だと思います。

オカンが東京に上京してきてからのエピソードにしても、癌の手術後、
再発するまでの、オカンに対するボクの接し方の感じとか、本当によく
わかるなあ、と思うし。
そうなんだよね、相手の事をもっと思いやって、気遣ってあげたら
よかったのに、と思ったりするんだけど、でもその時はそんなことを
あまり感じなくて、今までの延長で母親を接していた自分を思い返した
りして。
また、マー君の高校時代、大学時代の自堕落な感じも、個人的にはよく
わかる気もするし。

だから変な話、この映画を見ている間、母親をきちんと看取ったと思っ
ていたリリーフランキーに対しての後ろめたさみたいなものが消えて、
初めて素直にこの「東京タワー」という物語の世界に入り込めた気がした
のである。

映画を見終わった後も、オカンが亡くなってしまった事の悲しさだけが
残る、という事よりも、なんかオカンとボクと、そして時々オトンの
不思議な、そして温かい家族の中にひっそりと潜り込ませてもらった
ような優しい感じが残った感じで。

劇場を出た後も、何となく見慣れた東京の街並みが少しだけ違った風に
見えた気のする映画でした。

また今回は私にしては珍しく、映画のパンフレットを買ったんだけど、
このパンフレットがまた、内容が豊富で。
この映画、そして原作を、スタッフが大切に思っているんだなあ、と
いうのが、伝わってくるパンフレットになっていると思います。
普通だったら、出版社からメイキング本や、タイアップ本として発売
されてもおかしくない位の内容なので、買って損はないと思います。

特にスタッフ、そして普通ならクレジットだけで済んでしまう脇役の
人たちにまでインタビューをしているのは、この人たちは映画作りが
好きなんだなあ、と感じられて。

その中で個人的に気になった発言を備忘録的に引用させていただくと。


今は母性よりも自分が輝きたい方に母親が行っちゃうもんだから、子ど
もは踏み台になっちゃうんだけど、やっぱりあのオカンは自分をつぶし
てでも子どもを、というオカンだから。夫に対してもそうなんだと思う。
ああいうふうになってるけども、オカンにとってはあの夫が重しになっ
てたと思うのね。(樹木希林)


でも、撮影が終わって映画を観たら、母が私に近い年代のシーンで薄い
肉襦袢を入れて、私の肩幅とか体つきに合わせてるんです。そんなこと
一つ取っても、母の方が寄り添ってくれてたんですね。(内田也哉子)


原作を読んで一番シンパシーを感じたのがオトンなんです。ああ、こう
いう人わかるわかる、ってスッと入ってきた。たいていの男はオトンな
んじゃないかと思うんですよ。世の中の男の9割はオトンで、立派な
父親というのは1割ぐらいしかおらんのじゃないかと。(小林薫)


普通はあれだけのヒット原作だと、会社がいろいろ考えて、シナリオは
こういう風に書かせようとかあるじゃないですか。そういうのが上手い
人はいくらでもいるから。今の日本映画の風潮ってね、攻めて攻めて
泣かせて泣かせて的な、そういうのしか当たらない部分もあるじゃない
ですか。そういうところで僕がそれを書くっていうのは。すごい面白い
なって思ったんですよね(笑)。普通は僕に頼まないですよね。そういう
会社が幾つもからむと、僕には来ないよなあ(笑)(松尾スズキ)


――この映画、何回観ても飽きないんですよ。取材のためにカメラワー
クとかも見ようと思うんですけど、人の顔とか仕草に見入っちゃう。
結局、映画の時間を一緒に生きちゃうんですよね。

 そう言われると素直に嬉しい。俺も映画の撮影現場は知ってるわけだ
けど、10週間ぐらいやっていると映画としての時間をちゃんと作ってい
るか不安になったからね。時間をフィルムに定着することが映画監督の
重要な仕事なんだけど、難しいんだよ。(松岡錠司)



他にもいい話が沢山載っているので、劇場に行かれた際には、是非
サンプルを手に取ってみることをオススメしておきます。
(特に巻末のリリーフランキーの対談ページとか)
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